2017年4月23日、岩城みずほさんが主催され5年以上に渡り継続されている、「第26回サムライズ勉強会」に参加してきました。
今回のテーマは「消費者は、金融機関のビジネスモデルに惑わされてはいないか!?」です。
ランキングで、今こんな順位にいます☆(*・.・)ノ
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■会場の様子
今回の会場は、東京証券会館にある「CAFÉ SALVADOR ビジネスサロン」でした。
40人の定員が満員になり、盛況な会でした。こんな感じ(↑写真)で、ゆったりとした椅子が配置され、ざっくばらんに聞くことができます。
セゾン投信株式会社代表取締役社長 中野晴啓(なかのはるひろ)氏、久留米大学教授 塚崎公義(つかさききみよし)氏、進行役のファイナンシャルプランナー CFP®認定者 岩城みずほさんのお三方で、話が展開されていきます。
なお、この時は、岩城みずほさんと共著もある、金融評論家の山崎元さんも見学されていました。皆、有名な方々ですが、この後の懇親会(セミナー2,000円、懇親会3,000円)まで参加すると、ざっくばらんに名刺交換や自由に会話を楽しむことができます。おかげで、演者の皆さんや参加された方々とfacebook友達になることができました。
私は中野社長の会社と同じビルで働いているので、じっくりお話できてとても良かったです。ヽ(^o^)丿
会が始まった時の様子。
序盤は本日のテーマであった、受託者責任(Fiduciary duty、 顧客本位の業務運営)についての話から入りました。この話題では、経済活動については比較的に自由な競争で価格は需要と供給の上で成立している、一方、投資活動は「金融商品取引法」などの法律で縛られており、価格付けが曖昧になっている状況について、話を掘り下げようというものでした。
実際、投資信託の価格、つまり各種手数料は、顧客志向ではない部分で決まってしまっています。今回の受託者責任は、金融庁主導で、ルールではなくプリンシプル、倫理観で規律を作っていこうという取り組みで、 非常に新しく興味深い取り組みだと感じました。
では、お三方の会話を踏まえながら、会の様子をお伝えします。かなり私の脳内変換もあるので、純粋な口述筆記ではないことをご了承ください。
■受託者責任、価格、コストについて
(塚崎)経済学的には顧客本位だけではうまくいかないこともあります。例えば、企業は顧客だけでなく、株主の方も見ています。なぜ金融だけ顧客本位と言われなければならないのでしょうか?日常市場で売られている家電やコーヒーのように値付けさせれば良いのではないかと思うのですが?
さらに、金融のみ、金融庁というより厳しい監督機関が監督して縛られています。なぜ、受託者責任のような考え方が必要なんでしょうか?
(岩城)おっしゃる通りでそれは金融のみの世界でして、提供者と消費者の間で情報が非対称で、うまく行っていない現実があります。その点はどう思われますか?
(中野)コーヒーなら感覚的にみんなも価格が分かりやすいと思いますが、投資信託等は情報がうまく伝わらないところもあるため、提供者と消費者の間でギャップがあると思います。現実として、消費者が分からないものが売られています。そう考えると売る側に倫理観があることが重要だと思います。
冒頭から面白い話題で入りました。塚崎先生が経済学の市場ベースの話で既存の投資信託サービスの良くないところを指摘する一方、中野社長が情報の非対称の話題で市場が機能しにくい状況を反論するという図式で進みました。
■価格以外の価値について
(中野)金融機関はお馬鹿な状況に入っています。価格競争に入ってしまっている。現状は、常に手数料が安い状況が良いとされている事に対し違和感があります。
(塚崎)普通に事業をやっている金融機関は合理的なので、馬鹿なはずはないと思います。例えば、おじいちゃん・おばあちゃんでも高い価格で買ってくれるニーズがあれば売ればよいし、売るのに費用が安い方が良いならそのように売れば良いのが経済学の考え方です。お客様のターゲット・ニーズが違うので、一定量のニーズが有るなら敢えて高く売るのも良いと思います。
また、監督省庁に監理されている金融機関としては、金融庁向けにアピールする必要もあるので、それを考慮した歪んだ価格になる可能性もあります。
ここのくだりでも、中野社長が価格(手数料)以外の価値を分かりやすく伝えようとするのに対し、塚崎先生が経済学的な価格決定の仕組みを噛み砕いていました。ただ、このあたりから価格が歪む状況の話題に入ってきました。
■規模の経済と倫理観の対立
(塚崎)ヴァンガードは現在ジャイアントの会社になりましたが、このまま一人勝ちになると独占されて、いつかは値上げされてしまうと思うのですがいかがですか?
(中野)ヴァンガードのコストが安いのは努力の結果なのと、長い間ヴァンガードと商品開発をしてきたセゾン投信はヴァンガードの良心はよく理解しています。ヴァンガードのビジネスは自社のコストを極限まで削減したあと、そのあと必要以上の利益を乗せようとしていません。非常に倫理観を持ってサービスを継続しています。
ただ、その商品だけでは満たされないユーザニーズもあります。
このくだりでは、中野社長が、投資信託界のジャイアントになったヴァンガード社の強い倫理観が事業を15年以上継続させ、ETF、インデックス投資などの新しい市場を作っている現状を、明らかにしていました。
また、それだけではないユーザニーズにも、中野社長は触れていました。
■一物二価と倫理観
(中野)イデコ専用で、非常に手数料が安い投信があります。これは商売としてはオカシイと思います。また、経済的にも合理的ではない。ただ、それが生じてしまった理由は、「企業年金」は儲かるという誤った概念から始まったからだと思います。年金は大口であり割引が効く状況であるので、大手の投信会社はそのように考えてしまっていると思われます。
ただ、これ(あまり儲からないということ)に証券会社が気づき始めているのが今の状況だと思います。
一物二物価になることは非常にオカシイです。セゾン投信はこのような差をできるだけつけないように考えています。公平性の倫理的意識を大事にしています。
(塚崎)そういう意味では、経済学的にも一物二物価はオカシイと思いますが、この安い料金設定をしているのは、実は要因が他にあって金融機関がこちらに誘導しているシグナルであると思います。
(中野)確かに手数料が安ければ安いほど良いという考え方もありますが、そうじゃないニーズもたくさんあると思います。お客様の中にはいろいろな価値観があると感じていますし、コスト以外の価値を作る必要があると感じています。
このくだりでは、中野社長が大規模市場になりやすいイデコの安い手数料についての一物二価の矛盾を問題提起しました。それに対して、塚崎先生は金融機関のシグナルという表現で、共感しています。
■通勤中に人が倒れていたら助けるべき?
(岩城)ところで、今回の会のきっかけであった「人が倒れていた時、社長は株主のために職場に向かうべきか?」という問いがありました。塚崎先生は職場に行くべき、中野社長は助けるべきだという面白い話を聞かせて頂きました。
(中野)もちろん社長として、仕事は最優先と思っています。ただ、違う価値観もあります。だから、私は倒れた人を助けます。経済学的に割り切れないことは多いと思います。
(中略)
(岩城)投資信託において、顧客が払うべき運用報酬はどこまでが適正範囲なのでしょうか?
(中野)利益相反の概念が大事だと思います。お客様全部主義でお客様のためにあるべきだと思います。あまりコストのことばかり突き詰めると奉仕になってしまう。お客様の損失で利益が出るようなビジネスは良くないと思っています。
報酬の合理性を維持するために、①原則、必要以上の対価は受け取らない。②サービスを継続するために最低限のものをいただく。そしてその情報を開示する。これが最上のフィデューシャルデューティーだと思うのですが。
(塚崎)では、合理的な報酬とはなんなんでしょうか?経済学的に、売れるのであれば価格は高く売るべきだと思うのですが。
ここでは、中野社長の言いたいことが具体的に言葉になって現れました。お客様主義のもと必要以上のものを求めない、そして対価の内容をできるだけ説明する、というものでした。
■実は消費者側の考えも必要なのでは!
(塚崎)ちょっと話を変えますが、金融庁が言うべきところは、顧客側を勉強させることであると感じています。つまり今回の金融庁のフィデューシャルデューティー提案は、実は文部科学省に言うべき、金融の仕組みや投資を教科書に乗せてもらったほうが良いと思うのですが?
(中野)そうですね。ただ、今回のフィデューシャルデューティーはもっと理想の高い要求があって、金融機関側がきちんとするところもあると思います。
ここでは、塚崎先生の斬新な提案がありました。提供側だけでなく、むしろ消費者側にも問題があると!素晴らしい話の効かせ方!
私も、同様な考えを持っていてブログの過去記事で、書きました。
「「世界を破綻させた経済学者たち」読了 --経済学上の7つの事象について批判する書籍。経済学を悪用する詐欺師を責めるべきだが、批判しかしない当書籍も詐欺師と同等!」
■消費者としての日本人のメンタリティ
(岩城)普通の商品を買うのに、消費者はいろいろ状況を考えたあと、最後に実行します。なのにこと投資信託になると、いきなり何を買えばいいか相談してくる人が多いのが現状です。消費者はどうすべきだと思いますか?
(中野)日本人のメンタリティの問題があると思います。人に決めてもらいたい心理が大きいのが日本人です。
(塚崎)プロに相談するのは当然ではないかとも思うのですが、特に危機のときに相談に行こうとするのが日本人のメンタリティでありますね。
(岩城)いいファイナンシャルプランナーと悪いファイナンシャルプランナーの見分け方は、いきなり商品を売らないことだと私は思うのですが・・・・。お客様の背景をきちんと聞いてから適切に答えてあげるのが大事だと思うのです。
最後は日本独特の文化の話が出てきました。(^O^)
■山崎元さんの一言
次の懇親会になって、山崎さんに今回の話題の本質を聞いてみました。
その答え。
「うーん、いろいろあるけど、投信会社に求められていることはリターンの成績なんだから、それ以外のことは次の優先度で考えれば良いんじゃないの。まずはリターンの指標で測られるのが大事なんだけど!」
と・・・。やるなと思いました。
でも、優先度の低いことも、ゼロではないんだから考慮しないといけないぞ。
そういう意味では今回の会がいろいろな切り口で、素人に優しく説明してくれるとても良い会だと感じました!ヽ(^o^)丿
この記事のまとめ:
- 岩城みずほさんのサムライズプロジェクトに参加してきた
- 運用で頑張っているセゾン投信の中野社長、経済学の塚崎先生、その間で庶民の調整役の岩城みずほさんの多彩な話題展開が秀逸
- 経済の難しい話題を噛み砕いて説明して頂ける貴重な会であると感じる
- 山崎さんはとても頭がいい
■最後に、兜町界隈を散策してきました
まず、事前に近くの証券取引所に行ってきました。
途中に兜町の歴史地図が。
感動したのが、みずほ銀行の壁に、渋沢栄一さんの銀行発祥の地の碑が。
日枝神社に行ってきました。
東京証券会館の隣に、俳句の其角さんの住居跡がありました。
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